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青い煩い、少女の情動。
第6章 音楽室とリコーダー
昼休憩。
既に考えなくても自然に図書室に足が延びる。日課というか、私の生活の一部に取り込まれているのだ。ドア窓の反射で身だしなみを確認して、図書室へ踏み入る。この時はもう既に下着を履いていないことへの忌避感や不安感は消失していた。
『莉央っ。』
響君ともすっかり距離が縮まったように思う。特に今日はずっと響君の近くにいるような気がする。
[読んだよ。シナプスの托卵。ちょっと難しかったけど、面白かった。けど、夜崎なこ、っぽくなかったかも。]
『でしょ、夜崎なこの中でも異色な作品だから、書き味も違うし、特に言葉選びが違う。』
私たちはそれぞれが読んだ本について感想を言ったり、考察をしたりして昼休憩を過ごす。響君の影響で私はすっかり本好きになってしまったのだ。新しい世界を知るのはいつも楽しい。
[なんか、昼休憩だけだと話し足りないね。]
私の口からそんな言葉が漏れる。
[教室だと落ち着いて話できないし。一緒に帰ろうにも方向が逆だし……。]
今のは勝負台詞だ。暗に(第三者から見ればバレバレではあるが)一緒に帰りたいと伝えているのだ。響君はどう思っているのか?それが知りたいけど、素直には聞けない。自分の心が1番もどかしい。知恵の輪に更にイヤフォンのコードが絡まったようないじましさが私を襲う。けれど響君の口が出たのは私が思ってもない言葉で、
『僕も思ってた。……そういえば……まだ連絡先交換してないね、忘れてた。』
そうだ、忘れていた。恥ずかしながら私は文明の利器に頼るという選択肢をはながら忘れていたのだ。ラインでも電話でも会話をすることは可能だった。なんと間抜けなのだろう。私はもちろん
[そうだったね。うん。……ラインでいいかな?]
そうやって遂に(忘れていたのだから遂にという表現はおかしい)響君のラインを手に入れた。本人曰く、スマートフォンはめったに使うことがないから忘れていたのだと。いかにも文学少年らしい。
[さっそく、今日の夜連絡して良いかな?]
と期待混じりの声で私が尋ねると
『うん。テキストでも電話でもどっちでも良いよ。』
と響君が答える。