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青い煩い、少女の情動。
第6章 音楽室とリコーダー
電話をしてもいいという返答に、私は舞い上がってしまったが、場を弁えて咄嗟に平静を取り繕った。
今日は色んなことが起こり過ぎて、少し疲れたなぁ。睡眠不足もここにきて私の身体を蝕んでいるようだ。教室への帰路だけでも私はふらふらになっていた。予期せぬ体育の成果もしれない。今日は夜、響君との談合があるのだからしっかりしないと……。
刺激的な昼休憩の後。
5時間目の授業は音楽だ。音楽は当たり前だが音楽室で行われる。流石の私も遅れることなく教室に到着していた。
『莉央っ?ちょっと元気ないね?疲れてる?』
あいも変わらず美琴が……以下略
[うん、眠い。そして疲れた。]
私はぶっきらぼうに事実を伝える。
『そうか、そうなら。私のお膝においで?膝枕したげるよ?』
美琴は冗談のつもりだったのだろうが、
[ありがとっ。]
本当に疲れていた私は、美琴の言葉を額面通りに受け取り、迷わず美琴の膝(正確には太もも)にダイブした。
『よしよーし。がんばってえらいねぇ。』
美琴は一瞬戸惑ったように見えたが、すぐに母親モードへ切り替える。この切り替えの良さが彼女の良いところだ。
[莉央、好きな人と仲良くなるために毎晩夜更かしして本読んでるもんねぇ。健気だねぇ。]
あんなことやこんなことをしていても、好きな人を想いながらの行動だったら許されるのだろうか。それはいささか疑問だが……。私はそんなこと考える脳みそが残っておらず、ふとももの上で呆然と時の流れに身を任せている。とその時
『僕、莉央のこと好きなんだ。』
美琴が響君の声を真似て、私の耳に囁く。彼女の目は笑っている。
あーびっくりした。
私は顔を朱に染めながらも
[全っ然っ似てない……。響君の声はもっと冷涼で……。]
奇しくもというか、幸運にもというのが正しいのか、私は昨日の夢でその台詞が響君の口から告げられるのを聞いているのだ。美琴のクオリティの低い物真似にダメ出しを加えようとしたとき、
『僕の声の話?』
響君がひょこっと現れた。私はなんて格好を見られているんだ、とすぐに足を閉じるが、そのタイミングで履いていないことを思い出して頬がかあっと熱くなる。響君がどうこう依然に流石に無防備過ぎた。
なんでもないっ……
と私は言おうとするけれど、それより先に美琴が声を発していた。