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青い煩い、少女の情動。
第8章 布団の香り、
[響君っ、お風呂ありがとう。]
それが脱衣所から出てリビングへ向かった私の一言目だ。お礼を言うのは大事だからね。お風呂で色んなことがあったことは、今は棚に上げておく。まだ反省はしない。家に帰ってからしよう。
『どういたしまして。あったまった?』
[うん。]
響君の笑顔は本当に天使のようだ。実は背中に羽が生えているのではないか、と疑ったことも一度や二度では無い。
『よかった。体調大丈夫そう?』
[うん。ばっちり]
体調は万全だ。
[服、お風呂に干してていいかな?]
『僕がやっとくよ。莉央はそこでゆっくりしてて……。』
響君はそう言ってリビングのテーブルを示し、お風呂の方へ行ってしまった。少し名残惜しい。
私と悠寿君はソファーの上に隣あって座って、背もたれに身体を預ける。ふわっと全身の力が抜けて眠気が襲ってきた。
いけないいけない、私勉強しに来たんだよ……。
[眠い?]
私は悠寿君に笑顔を向ける。
『大丈夫……。』
そうはいうものの相当眠そうだ。瞼が半分落ちかけて、身体も前後に揺れている。
[ここ……。頭ここに置いて寝ていいよ?]
『うん。ありがとう……。』
悠寿君は私のふとももに頭を置いて、そのまま寝てしまった。身体は横向きに、私のお臍に顔を向けている格好だ。足をぎゅっと折りたたんでいる。可愛い。
さらっ。私は彼の髪を指ですく。春の小川のようにサラサラだ。清く華やかな匂いが薫る。
私はそっと彼の頭に手を置いた。
『あれ?ひさ寝ちゃった?』
そこへ響君が帰ってくる。別にやましいことはしていないが、距離の縮まりようを不審に思われるかもしれない、と身体が強張る。
[うん。お風呂上がりで眠くなっちゃったみたい。]
『お風呂で仲良くなったの?』
響君は微笑ましいものを見るような慈愛の目だ。私の懸念はやはり杞憂だった。
[うん。なんか私に懐いてくれてるみたい。]
ふふっ、とどこからともなく笑みが漏れる。
『邪魔だったら、横に寝かせといてもいいよ?』