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黒薔薇学園の白い百合たち
第9章 土方先生の実家にて
日曜日…
約束の時間通りに土方先生は私を迎えに来てくれた。
前日の土曜日に行き慣れない銀座に出向いて
かなり奮発して見映えのいいワンピースを買ったので、その姿を見て土方先生は目を丸くした。
言葉が出てこないのか
開いた口が塞がらないようでした。
「この格好じゃ、変かしら?」
自慢気に
土方先生の目の前でクルリと回ってあげた。
「いや、驚いたよ…
馬子にも衣装というか…」
「土方先生、それ、誉め言葉になってませんよ」
「えっ?あ、あ、そうか」
とにかく素敵だよと
私に抱きついてきてキスをしようとした。
「あん!やめてよ!
折角、メイクもバッチリしたのに
ルージュが落ちちゃうわ」
「大丈夫だよ
由里ちゃんはスッピンでも綺麗だしさ」
「いやよ。ノーメイクだなんて
初めて土方先生のご家族の方にお会いするのに
失礼のないようにしなきゃ」
私をご家族に紹介するってことは
私を将来的に嫁として
迎え入れることを決意したのだと
私にもついに春が来たのだと
ドキドキしながらも
心は華やいでいた。
「実家は、ちょっとした高台にあるから
タクシーでいこうか」
あら?駅から遠いのかしら?
高台と言っても歩けると思うんですけど…
健脚には自信があるし…
でも、けっこうな坂道を登って行くので
タクシーにして正解だったわねと
いくら健脚でもこの坂道はつらいわねと
そう思わずにはいられませんでした。