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黒薔薇学園の白い百合たち
第11章 女帝 淑子
淑子は深夜の屋敷を忍び足で歩いていた。
自分の屋敷なのだから
堂々と闊歩すればよいのだが
足音で寝室の外で聞き耳を立てに来たと
息子の義明に知られたくはなかった。
双子の息子で
家を飛び出した雅人が
「彼女」だと、由里を紹介しにここへやって来た。
物怖じせずに、この私の問いかけに
自分の意見をちゃんと言える女。
ああ、こんな女を私は探していたんだと
あらためて気づかされた。
自分一人で、
これほどまでの財を築いてきたのだから
土方家を衰退させるわけにはいかない。
跡継ぎの義明ったら
どこの馬の骨かもわからぬ
金目当ての女ばかり連れて帰ってくる。
あんな金の亡者のような女たちに
この財を引き継がせる訳にはいかない。
自分の目に叶った女でなければ
土方家に嫁に来させるわけにはいかなかった。
『あの女…日向由里であれば
安心して跡を継がせる事ができる』
そのためには家を出て
土方家と距離を置く雅人の嫁になどしてはいけない
幸いにも双子で瓜二つの兄である義明がいるのだから、あの子と由里が結ばれることが
最善の道だと考えた。
どうやら双子の兄である義明も
由里をいたく気に入ったようだ。
淑子はメイドの「ばあや」に
由里の食事に睡眠薬を仕込むように命じた。
意識が朦朧としているうちに
義明が肉体関係の既成事実を作ってくれればと考えたからだ。