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黒薔薇学園の白い百合たち
第16章 婚姻
ガッカリする私たちに
「マイナカードをお持ちですか?
もし、持っているのなら夜11時までなら
向かいのコンビニで取得できますけどねえ」と
教えてくれました。
私たちには係の男のその声が
まるで天の助けの声に聞こえました。
時刻は午後10時50分!
私たちは走って向かいのコンビニに駆け込んだ。
今の政府に決して満足している訳じゃないけど
この時ばかりはマイナンバーカードを作成しておいて良かったとつくづく感じた。
プリントアウトされた二人の戸籍謄本を持って
再び係の男性がいる窓口へと急いだ。
「お待ちしてましたよ」
男性も二人が帰ってくるのを心待にしてくれていた。
書類を差し出すと
じっくりと内容を確かめて
無愛想だと思っていた男性が、こんなにも柔和な笑顔が出来るんだと驚くほどの笑みを見せ
「ご結婚、おめでとうございます
どうぞ、末長く押し合わせに」と
祝福の言葉を投げ掛けてくれた。
そう言われた瞬間、
本当に雅人さんの妻になれたのだという歓喜が
とてつもなく大きな波となって訪れて
私はその場で顔をグシャグシャにして泣いてしまった。
「嬉し涙っていうのは、いつ見ても気持ちがええもんですなぁ」
これ、良かったら使こうてくださいねと
係の男は「タバコの吸い殻のポイ捨てはやめましょう」というマナー向上の文字が印刷されているポケットティッシュを手渡してくれた。