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黒薔薇学園の白い百合たち
第16章 婚姻

夜中の市役所はシンと静まりかえっていた。

緊急の届け出の提出は夜間出入り口へという
案内板に導かれて
私と雅人さんは夜間出入り口のドアを開けた。

「はい、死亡届でしょうか?」

二人の姿を見つけた受付けの男性が
そのように尋ねた。

こんな夜中に持ってくる届け出なんて
死亡届だと決めつけているようだ。

「あ、違うんです…
あの…婚姻届を…」

そのように伝えると
係の男は姿勢を正して
直立不動で二人に対応した。

「そうですか、それはおめでとうございます」

さあ、どうぞ、受け付けますよと
係の男は手を差し出した。

「よろしくお願いします」

婚姻届を男に差し出すと
彼は記入間違いがないかどうかを
真剣な眼差しで用紙に目を落とした。

「これはいけませんねえ」

係の男はしかめっ面で「これでは受け取れません」と失望を与える言葉を口にした。

「えっ?ダメなんですか?
婚姻届はどこで提出しても大丈夫なんじゃないですか?」

土方先生は何がなんでも受け付けてもらいたいと食い下がった。

「お二人ともこちらに居住していないんですよね?
そうすると戸籍謄本の写しが必要になります」

ええ!そんなあ!
東京に戻ってしまって淑子さんたちに捕まったら
計画が台無しだわ!

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