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黒薔薇学園の白い百合たち
第17章 帰京

大阪へ向かうときは
一人ぼっちで失意のどん底だったのが
帰京する今は隣に夫となった雅人がいて
新幹線の静かな振動さえ心地よく感じた。

土方先生は、もう離さないぞとばかりに
ずっと新幹線の車内で手を繋いで離してくれなかった。

「さて、帰ってお叱りを受けるとするか」

とても憂鬱な事が待ち受けていると言うのに
土方先生はドンと構えていた。

教職を失ったって構わない。
由里との生活を守るためには
どんな仕事でもいいから必死に働くつもりだった。

五日間の無断欠勤…
これはもう言い訳の仕様がなかった。
懲戒解雇かなあ…
だとしたら退職金は出ないな…

まあ、10年も働いていた訳じゃないし
たいした額でもないから
痛くも痒くもないけれど

新幹線の車内で雅人さんはそんな事を言っていました。
私は申し訳ない気持ちで一杯になって
気づいたら涙をポロポロ流して泣いていた。

「泣くことはないんだよ
今までのスキルを生かして塾の講師だってやれるし、体力に自信があるから宅配ドライバーでもやれる自信はある
とにかく、由里を幸せにするためなら僕は何だってするよ」

肩を強く抱きしめながら雅人さんはそう言ってくれた。

続けて
「それよりもうちの家族のせいで君を傷つけたし、教員免許の取得も遠退いてしまった…
僕としてはそっちの方が悲しいよ」

雅人さんが言うには
平穏に何事もなく過ごしていたなら
私と共に黒薔薇学園の教壇に立って
教師という職業に胸張って生徒の将来の手伝いをしていけたらと思っていたそうです。

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