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黒薔薇学園の白い百合たち
第17章 帰京
大学からの帰りに夫である雅人さんの部屋に立ち寄って、私は全てを理解した。
「まあ!あの子達が嘆願書を?!」
「うん、お陰で命拾いしたよ
でもね、嘆願書でも集めてみれば?なんて言い出したのは里中教頭らしいんだ」
「えっ?教頭先生が?」
私たちが教員室でイチャイチャしていたら
いつも般若のような怖い顔でイヤミを言っていたというのに…あの教頭先生が助け船を出してくれた?
その頃、里中教頭は自宅にて
「誠…あなたが望むように土方先生と教育実習生のお二人を無罪放免にしたわよ」
「うわぁ!ありがとう!!
やっぱり井津美は最高の女だよ」
「もう!誠ったら…
そんなにおだてても、もう何も出ないわよ」
「井津美は出さなくていいさ
出すのは僕の方だよ、白くて濃いやつをね」
頑張ってくれたご褒美だよ
誠はそう言って井津美を抱きしめた。
一人落ち込んでいたのは学園長であった。
「儂(わし)、学園長なんだけどなぁ…
職員会議でほとんど意見を言わせてもらえなかったよ」
外に飲みに行く気もなれずに
長年連れ添った古女房を相手に晩酌のグラスを傾けていた。
「それでいいんじゃありませんこと?
『長』と役職のついている者がでしゃばると
組織って活性化しないと言いますわよ」
「それにしてもだ…」
まあ、愚痴はよすか…
学園長はグラスのウィスキーをグイッとあおった。
自分が他校から引き抜いてきた里中教頭が
今回の件で教員一同の信頼をグッと手元に引き付けたことだしな…
「そろそろ儂(わし)も身を引くかな…」
「そうなさいな…
そうしたら二人でゆっくりと旅行がしたいわ」
「二人で旅行なんて新婚旅行以来だな」
「温泉に行きたいわ
ねえ、二人で温泉に浸かりましょうよ
私、あなたのお背中を流してあげますわ」
よせやい!気色悪いな…
そんな風におどけてみせたが
第二の新婚生活も楽しいかもしれないなと
学園長は密かに引退の決意を固めた。