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ラズベリーの甘い誘惑
第2章 恋は盲目の意味を答えよ。
「なーにやってんすか?」

びくん。裕香の肩が跳ねる。
目の前に突然現れた、人懐っこい笑顔を、目を丸くさせて見詰める。
咄嗟に言葉が出なくてそのまま固まっていると、直輝は不思議そうに首を傾げた。

「どしたんすか?」
「え、あ、いや…、驚いて」

裕香は呆けたままの表情でそう返す。直輝は可笑しそうに声を上げて笑った。
笑われた事に怪訝そうな顔をすると、直輝はごめんごめんと言って、裕香の前の席に座る。
そして、興味津々といった表情で、身を乗り出し、裕香に詰め寄った。

「で、こんなとこに一人で何やってんすか。三年生は自由登校ですよね」

裕香はあーと意味もなく母音を返す。
机についていた頬杖を止め、椅子に深く凭れ掛かった。

「ちょっと、考え事」
「ふぅん? 何を?」
「高校生活の事」

直輝は答えをもらっても、尚も不思議そうに首を傾げるだけだ。
裕香はそんな様子を特に気にせず、これ以上は答える気がないのか、視線を窓の外へと送った。
寒空の下、まっさらなグランドには誰もいない。

「高校生活の事って何? 裕香先輩、もう卒業しちゃうじゃないっすか」

また物思いに耽ろうとした思考を、無遠慮な声が邪魔をする。
視界に無理矢理入ってきた、能天気な瞳と目が合う。
裕香は小さく溜息をついた。

「卒業するから、考えてるの」
「え、え? だって普通はこれから始まる夢の大学生活について考えるんじゃないんすか?」
「夢のって……、君、中学のときもそれ言ってたよね」

直輝はきょとんとした表情を浮かべ、そうだっけと首を傾げる。
あの時から思考が変わってない事に、裕香は少しだけ相手の将来が心配になった。

「で、なんで高校生活の事?」

問いかけが最初に戻る。これでは堂々巡りだ。
裕香はどうしたものかと眉間に皺を寄せて考える。なるべく、この真っ直ぐ過ぎる後輩にもわかるように、言葉を選んで答えた。

「だから、もうそろそろ卒業しちゃうから、今までの事を思い出してたの」
「ああ、なるほど! なぁんだ、それならそうと早く言って下さいよ」

合点がいったのか、途端表情が明るくなる直輝。なるほどねと何度も一人でうんうんと頷いている。
本当にわかっているのかと、裕香は疑い深い目で見るが、直輝は気付かないようだ。

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