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ラズベリーの甘い誘惑
第2章 恋は盲目の意味を答えよ。
「裕香先輩って意外とセンチメンタルなんですね」

意外と、の言葉に裕香は思わずムッとした表情を浮かべた。
確かに人より冷めている自覚はあるし、回りの人もそう思っている事は薄々気付いていた。しかし、誰もがしんみりとするこの時期になれば話は別だ。
人の気も知らないでと、にへらと緩く笑みを浮かべる直輝の額に、苛立ちを隠さず手加減なく、デコピンをおみまいする。

「いでっ」

完全に油断していた直輝は、まさか攻撃されるとは思っておらず、突然の痛みに声を上げる。
両手で額を押さえ、恨めしげに裕香を見詰めたが、裕香はどこ吹く風。冷たい態度で顔を逸らした。

「いきなし何するんすか」
「君が悪い」

裕香は深く溜息をついた。コイツ早くどっか行かないかなと考える。

「で、何を思い出してたんすか?」

しかし直輝の方は別段どこかへ行く気はないようだ。
デコピンされた事などもう忘れてしまったかのように、直輝は更に質問を重ねる。
裕香に素っ気無くされても喰らいついてくるのは、この直輝くらいだ。裕香にとってそれは、少し鬱陶しく、そして少しだけ嬉しかった。

「別に。他の人が思い出しそうな事よ」

それは例えば、入学して間もないときの事だったり。
文化祭や体育祭といった学校行事の事だったり。
中学のころから続けている部活動の事だったり。
ここずっとやっていた受験勉強の事だったり。

学校にあるお気に入りの場所。
食堂で食べたランチメニュー。
放課後、友達との何気ないお喋り。
授業を始めてサボった日。

そういった何気ない高校生活を、裕香は思い返す。
思い返し、思いを馳せ、そして少しだけ、後ろ髪を引かれる。
思い出の中で楽しそうに笑う自分を、羨ましく思った。

「君だって、卒業するときにわかるわ」

過去を、振り返らずにはいられないと言う事を。

「もしかして先輩、不安なんすか? 東京に行く事」

裕香は息を呑んだ。驚いて目を丸くし、直輝を見つめる。
そんな素振りを少しでも見せただろうか。確かに昔を思い出して、少しだけセンチメンタルな気分になっているが、それは誰にでもある事で、特別な事ではない。


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