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全部、夏のせい
第7章 初めての夜とその後〜エクス、マルセイユ、パリ

箱を開けると、エクスに来たばかりの頃、
エルメスで見せて貰ったクロコダイルのバーキンが入っていた。
ご丁寧に、片方の持ち手にはエクスの空のような色合いのツイリーが巻かれている。
多分、数秒間、私は口をあんぐりと開けていたと思う。
「これは?」と言うと、
「絶対にマーサに持って欲しかったから…」と、
悪戯を怒られる子供のような顔をするので、
思わず笑ってしまった。
「もう、返却は出来ないものね?
でもね。
これ、きっと、
車くらいのお値段だったでしょう?
もっとじゃないかしら?」
「ほら。
結婚の時は、家や車を…」
「アラム?
日本はそんなこと、しないの。
私の家は本当に普通の家よ?
おまけに、私、まだ大学生なのよ?
こんな立派なバッグ、とても似合わないの。
このバッグを持ち歩く人はね、
電車に乗ることもないような生活をする人よ?
私、日本では、
普通に電車に乗って大学に通学するし、
家庭教師のアルバイトもしてるのよ?」
「マーサ、ごめん。
怒ってる?」
「怒ってる訳じゃないけど、
生活水準とか、お金の使い方、価値観が違うと、
一緒に暮らすのが大変だと思って…」と言うと、
アラムは深刻な顔をして、
「一緒に暮らせないってこと?」と言った。
「ううん。
だからね。
こういう大きいお買い物する時は、
先に相談してね?
それと、プレゼントだから、有り難くいただきます。
でも…」
「でも、何?」
「もっと歳を取って、
私がこのバッグに相応しくなるまで、
大切に取っておくわね?
それでも良い?」
「マーサに従うよ」
「他に何か、隠してること、
無いわよね?」
「んー。
多分、無いけど…」
「無いけど、何?」
アラムは耳元で、
「パリに行ったら、レースたっぷりの下着は、
プレゼントさせて?
それは、大丈夫だよね?」と囁くので、
私は真っ赤な顔になってしまった。
そして、その日の午後、遅めにホテルをチェックアウトして、
車でマルセイユに移動した。
物凄く大きな黒塗りの車で、
アラムが言うところの「護衛」の二人が、
運転や荷物運びをしてくれた。
アラムの友人のアリは、一緒には居なかった。
エルメスで見せて貰ったクロコダイルのバーキンが入っていた。
ご丁寧に、片方の持ち手にはエクスの空のような色合いのツイリーが巻かれている。
多分、数秒間、私は口をあんぐりと開けていたと思う。
「これは?」と言うと、
「絶対にマーサに持って欲しかったから…」と、
悪戯を怒られる子供のような顔をするので、
思わず笑ってしまった。
「もう、返却は出来ないものね?
でもね。
これ、きっと、
車くらいのお値段だったでしょう?
もっとじゃないかしら?」
「ほら。
結婚の時は、家や車を…」
「アラム?
日本はそんなこと、しないの。
私の家は本当に普通の家よ?
おまけに、私、まだ大学生なのよ?
こんな立派なバッグ、とても似合わないの。
このバッグを持ち歩く人はね、
電車に乗ることもないような生活をする人よ?
私、日本では、
普通に電車に乗って大学に通学するし、
家庭教師のアルバイトもしてるのよ?」
「マーサ、ごめん。
怒ってる?」
「怒ってる訳じゃないけど、
生活水準とか、お金の使い方、価値観が違うと、
一緒に暮らすのが大変だと思って…」と言うと、
アラムは深刻な顔をして、
「一緒に暮らせないってこと?」と言った。
「ううん。
だからね。
こういう大きいお買い物する時は、
先に相談してね?
それと、プレゼントだから、有り難くいただきます。
でも…」
「でも、何?」
「もっと歳を取って、
私がこのバッグに相応しくなるまで、
大切に取っておくわね?
それでも良い?」
「マーサに従うよ」
「他に何か、隠してること、
無いわよね?」
「んー。
多分、無いけど…」
「無いけど、何?」
アラムは耳元で、
「パリに行ったら、レースたっぷりの下着は、
プレゼントさせて?
それは、大丈夫だよね?」と囁くので、
私は真っ赤な顔になってしまった。
そして、その日の午後、遅めにホテルをチェックアウトして、
車でマルセイユに移動した。
物凄く大きな黒塗りの車で、
アラムが言うところの「護衛」の二人が、
運転や荷物運びをしてくれた。
アラムの友人のアリは、一緒には居なかった。

