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全部、夏のせい
第11章 パリの長い夜
大家族のように過ごしていると、
時々、アラムのお父様にアラムの面影を重ねていることに気付いて、
ハッとすることがあった。

それは、親子だから似ていて当然だけど、
私を思い遣るような優しい眼差しや、
一緒に過ごす時にフワリと香る同じフレグランスに、
懐かしさだけではない不思議な感情を持っていることに、
時々、ドギマギしてしまう。


また、夏が巡ってきたある日のことだった。

その日は、祖母が子供達二人を連れて、
キャンプに行ってしまっていた。

本当なら私が行くことになっていたけど、
生理痛が酷くて動けなかったので、
付き添いを代わって貰った。


簡単な朝食をみんなで取って、
三人を見送った後、
全く動けなくて、
ベッドに横たわって丸まっていた。


ランチを作ろうかと起き上がろうとしても動けなくて、
泣きたくなりながら、
あのエクスの時もそうだったなということをぼんやり思い出していた。


ランチの時間が過ぎても声が掛からなかったので、
最初、アリがそっとノックをして、
こちらの家に来た。

声を掛けてくれるけど、
私は声も出せずに居た。


寝室をノックして、
「マーサ?
開けるよ?」と言って、そっと声を掛けてからドアを開けたアリは、
びっくりしたような顔で、ベッドに駆け寄る。


「マーサ、大丈夫?
救急車、呼ぼうか?」と言って、
部屋に戻ろうとするので、
服の端を掴んで、

「違うの…」と言ってなんとか止める。



「あのね。
単なる生理痛なの。
だから…大丈夫」と言うと、

「えっ?」と言って固まってしまう。


そこにお義父様も入ってきて、
私を見て、
同じように、
「マーサ、どうしたんだ?
具合、悪いのか?
救急車を…」と言い出す。


私は顔を紅くしながら、

「あの…男性にはあまり言いたくはないのですが…。
生理痛で痛くて動けないんです」と説明した。


「おお、それは…」と言うと、

「アリ。
外で何か、
喉越しが良さそうなものと、
鉄分に富んだものを買って来なさい」と言って、

「薬は飲んだのかな?
マーサはとにかく、休んでなさい」と優しい顔で言って笑った。



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