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第12章 １２

その『踊らされている』屈辱もさることながら、しかし涼子の舌は『感動』と『快感』を表現すべく――恥ずかしながらやはり、“踊る”。

（知らなかったわ……）

涼子は思った。

（“キス”がこんなにも、“女”を『感じさせる』ものだったなんて……）

　　　　　　　　　　　　　　　☆☆☆☆☆

例えば――――

今、レンヤの舌先は、涼子の舌を撫でている。

涼子が低く据えた舌を、もしもスケートの“リンク”に見立ててみたら、レンヤの舌先は、華麗な演技を披露する“スケーター”のようだ。

レンヤの舌先は、涼子の舌の上で円を描き、十字に滑って――時々――“跳ねる”。

一方――そんな愛撫を受け止める涼子の舌先は――実のところレンヤの――何倍も――“飛び跳ねる”。

レンヤの舌先が一回円を描く毎に――与えられた快感に件の「ハッ」とか「あッ」とかいう『恥ずかしい』声を漏らして――涼子の舌は陸に打ち上げられた魚のように、“飛び跳ねる”。

彼の舌先が、一回“ルーーッ”と直線に走っても、“飛び跳ねる”。

また彼の舌が跳ねた後にも――やはり涼子の舌も、“飛び跳ねる”。

そして何度も何度も”飛び跳ねる“を繰り返す挙げ句として――涼子の舌は――『恥ずかしい』声に合わせて――”踊って“いた。

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勿論のこと、涼子は苦しんでいる――羞恥に相当、苦しめられている。

（私の舌……どうかなっちゃったみたい……）

舌が“飛び跳ねる”経験など、生まれて初めてな訳だから、生れて初めて経験する恥ずかしさだ。

その恥ずかしさに――今もなお聞こえてくる――舌が飛び跳ねる都度に漏れる声が、輪をかける。

「あっ、ハッ――ファッ、ハハッ――あっ、ファッ――」

しかし相当の羞恥に苛まされるその一方で、涼子はこうも思う――今の快感は、その羞恥と引き換えに得るには、十分だ。