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cape light
第2章 花火なんて大嫌いなんですよ、僕は
 くそじじぃが運転する車の後部座席で、僕は自分に落ち着くようにと何度か命令した。でもわくわくする気持ちはどうしても抑えることができなかった。
 ところが……。
「もうそろそろだな」とくそじじぃが言ったので僕は窓の外を見た。すると、僕の視界にたくさんの車が映ったのだ。
 国家の秘密機関は一体どれだけの人間に招待状を出したのだろうか。くそじじぃはまた言った。
「やはり混んでるな」
 それに対してくそばばぁは
「そうね」
 と返した。
 自慢じゃないが、僕の体育の成績はずっと5だった。そして他の教科はすべてが3だった。つまり僕の国語の成績は3だったということになる。
 読んでも書いても3。読解力も3。そんな僕でもくそじじぃが言った「やはり」、そしてそれに対してくそばばぁが答えた「そうね」という言葉に僕のアンテナが反応した。
 我が家は招待されたのでない。くそじじぃとくそばばぁは極秘実験をする側なのだ。都の水道局に勤めるくそじじぃ。家計が苦しくてもパートなんかに出ないくそばばぁ。これは世を忍ぶ仮の姿なのだ。
「やはり」くそじじぃはこの状況を予測でしていた。それに対してくそばばぁが「そうね」と呼応したのだ。
 さえないくそじじと口やかましいくそばばぁにうんざりしていた僕であったが、このとき初めて、秘密組織の一員として実験を遂行するくそじじとくそばばぁをマジですごいと思った……。
「よし着いたぞ」
 くそじじぃがそう言った。
「翔、これを背負って」
 助手席に座っていたくそばばぁがリュックを僕に渡した。
「翔、今日はたくさんの人が花火を見に来るからパパとママの手を放すんじゃないぞ」
 くそじじぃが僕にそう言った。
 消したい過去は誰にでもある。僕はこの頃(小学二年か三年か、それとも四年生の頃)くそじじぃとくそばばぁをパパとママと呼んでいた(僕はそのときの僕を殴りたい。そういう歴史を役所が使う黒いペンで塗りつぶしたい)。
 心地よい優越感に浸っていた僕は、ここから真っ逆さまに地獄に突き落とされる。
 僕はうっすらとした違和感に包まれた。我が家は秘密機関の幹部じゃないのか。幹部のご子息にリュックを背負わせるなんて間違っている。幹部のご子息のリュックは、幹部の部下が背負うべきである。が、車を降りても誰も来ない。ていうかまじで駐車場激混み。でもってめちゃくちゃ人が多い。
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