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cape light
第2章 花火なんて大嫌いなんですよ、僕は
 帰りの車中(もちろん後部座席)で僕は腕組みをしてそのときを待った。どこかでこの車は止められる。そして秘密機関の追手によって我が家族は捕らえられるのだろう。逃げも隠れもしない。僕だってそのくらいの覚悟はある。
 だが一つだけこの馬鹿幹部に訊ねたいことがあった。それは水中花火。くそじじぃとくそばばぁに遠慮はいらない。
「あのさ、どうして失敗したの?」
 僕は正々堂々とそう訊ねた。
「失敗? 失敗って何が失敗なんだ?」
 と、くそじじぃ。
「水中花火」
 僕はこの言葉につられて○○海岸まで来たのだ。
「翔、水中花火見たでしょ?」
 と、くそばばぁ。
「いつその水中花火は海の中を潜って行ったんだ?」
 と、僕は僕の疑問をストレートにぶつける。
「花火が海中を潜るということか?」
 と、ハンドルを握っているくそじじぃ。
「そうなんだけど」
 と、そっけなく答える僕。
「翔、ひょっとしてお前、花火が海の中で爆発するとでも思っていたの?」
 助手席に座るくそばばぁが後部座席に座る僕を見てそう言った。
「ああ」
 当然僕はそう答える。
 ここから大事な場面になる。特殊相対性理論を発表したアインシュタインに僕は訊ねたいことがある。世の中に流れる時間が消えるなんてことがあるんですか? と。
「ああ」と僕が答えた後、確かに時間は消えた。何もない空白というやつが正常に流れている時間と時間の間に入り込んだ。
 呼吸はできるが何となく息苦しい。目に入るものがすべて静止している。でもって何も聞こえてこない。だからと言って違う世界に入り込んだようにも思えない。
 数秒の空白の後だった。溜まりに溜まったエネルギーがここで爆発した。
「わはははは」「ふひぃひぃ」「ははは」
 くそじじぃとくそばばぁのそういう笑い声を僕は初めて聞いた。じじぃとばばぁの笑いは数分続いた。信じてもらえないかもしれないがまじで数分続いた。
「ぶひぃひぃひぃ、翔、ぶはぁはぁはぁ、お前は天才だ。ぶほぉほぉほぉ、翔、学校の成績なんて気にするなよ。ぶぴぃぴぃぴぃ、翔、オール3で十分だからな。ぶぽぉぽぉぽぉ」
 くそじじぃは笑いながらそう言った。
「翔、ふふふ、帰ったらハンバーグ作ってあげるわ、ふふふ。もうお腹空いたでしょ、ふふふ」
 と、くそばばぁ。
 そのとき僕は決心した。帰ったら僕はパン屋のパートのおばさんの子供になる。
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