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暗い部屋の中の 水音
第6章 雪の故郷
翌日
雪の空港に 降り立った 10年ぶりの函館
あれほどまでに帰りたいと 何時も願って 思い描いていた
故郷が悲しみの中での帰郷に成ってしまった
父の部屋を 受付で尋ね 病室へ向かった
病室を夫と訊ねる 母が枕元に座り寝ている痩せた父の姿を見た
母が 真奈美を見て 立ち上がり 近寄って来た
「お母さん 私の主人」
真奈美は 隆を紹介した
「初めまして 真奈美の母です」
母が隆に 頭を下げて来た
「お父さん 貴方の事何時も気にしてた 貴方に言った事
凄く後悔していたと思うわ 時々 貴方の写真取り出して 見て居たの
何時も貴方の事話すと 知らんって言うの 再婚したと 話したときは
嬉しそうな顔で 知らんて言ってね 喜んでいたのよ」
母は父を見て 話している時 父の目が開き起きて来た
「お父さん」
真奈美は ベッドの足元から声を掛けた
「・・・ま・な・み・か・・・??・・」
父が起き上がりながら 声を掛けて来る
母が慌てて父の傍に駆け寄り 体を支え
「お父さん・・ごめんなさい・・ごめんなさい・・」
涙が溢れ 言葉が出せなく成って居た 父の手が上がるのを見て
父の枕元に跪き 痩せた手を握り絞め 父の手が重なって来た
「・・ご・め・ん・な・さ・い・・」
手を握り 真奈美は父を見つめていた
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
父は優しい目で真奈美を見つめ 頷いていた
「再婚したんだってな ご主人か?」
隆を見ながら 父は真奈美に訊ねて来た
「隆・・・夫・で・す・」
真奈美は 泣きながら夫を紹介した
「・・・・・・・・・・・・」
父は黙って 隆を見て 何度も頷いていた
「・・今 幸せか?・・」
荒い息に 変わり出した中で真奈美を見て 父が聞いて来た
「・・幸せだよ 私を大事にしてくれている・・」
父の手を握り 真奈美は答えた
「・・・・・・・・・・・・・」
笑顔に成り 父は頷いていた
「・そうか・よ・か・っ・た・・・よ・か・っ・た・・よ・か・・っ・・」
頷きながら 父は体を横にして眠り始めていた
「・・お父さん・・」
真奈美の呼びかけに 父の返事は帰って来なかった
家族に見守られ 父はその夜眠る様に 安らかに息を引き取って行った