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暗い部屋の中の 水音
第6章 雪の故郷


「有難う」 
母が真奈美の手を握り 言って来た

「貴方に言った事 あの人後悔していたわ」 
母が話始めた

「何時も 気にかけて居たの 私が話すと 知らんって言いながら」

「貴方が 再婚したと 話したときも 嬉しそうだったけど 知らんって」

「お父さんがね 貴方の名を呼んでたの 病室で寝ながらね」

「私 電話しようか 迷ってたのよ あの人貴方に逢いたかったのね」

「ずっと 貴方を待っていたのね・・・」

「真奈美を気にかけて・・ずーっと待ってたのよね」 
母が言い重ねた

「幸せそうな 顔でしょ 有難う 有難う・・・ありがとう・・・」
泣きながら母は 真奈美の手を握り絞めていた・・・・・・・

真奈美は 眠る父を見て 心の中で語りかけていた

・・お父さん有難う 育ててくれて・・・

・・ごめんなさい・良い娘で無くて・・・・

・・お父さん有難う ゆっくり休んでね・・・・・

白い煙が 父親を送りだしている 無機質な作りの建物を出て
煙突から 出る煙を見て

・・・お父さん 御免なさい・・・

涙を堪え 煙を見つめていた 隆が真奈美の後を追うように
扉から出て来ると 横に立ち 体を抱きしめて呉れ
胸に顔を埋め 嗚咽を上げてしまった 静かな嗚咽が
段々と大きく成り 隆の胸に縋りながら 慟哭へと・・・

息が苦しく成り 呼吸を忘れた様に 何時の間にか
意識を 失っていた

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