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女優なんて…
第9章 村を出てゆく

「さあ!今日も一日ロケを精力的に撮りましょう!!」

助監督の号令で器材がセットされてゆく。

「それにしても監督遅いなあ…」

きっと深酒でもして寝坊しているのだろうと思った。

さあ、後は監督と主演女優を待つのみだと
スタッフが待ち構えていると
大白川監督と主演女優の涼風あかねがようやくロケ隊に合流した。

合流するやいなや
大白川監督はメガホンを手にして「撤収~!」と叫んだから準備していたスタッフは驚いた。

「監督!撤収って…冗談ですよね?
まだ全然撮り終えてないですよ」

「撤収と言えば撤収だ!
残りは他の村で撮る!
何もこの村でなければいけない理由はない!」

そんなあ…
最初のスタッフ会議で大々的なロケを敢行しなくても農村風景なら都内の山奥や隣県に行けばいくらでも撮れるというのを、この村でなければダメだと駄々をこねたのは監督だと言うのに。

「皆さん本当に申し訳ございません!
この村をアピールするよりも
今まで通りにひっそりと暮らしたいという意見の方が多くなってしまって…村長からロケを中止させなさいと指示がでたんです」

私はロケ隊の皆さんに申し訳なくて
涙をポロポロ溢(こぼ)しながら非を詫びた。

「仕方ねえな…はい!では、撤収~!!」

助監督が納得がいかないという顔をしながら
スタッフ一同に撤収を指示した。

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