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女優なんて…
第14章 初舞台

「違う!ちがう!!
何度も言わせるな!
恋い焦がれている男に胸を揉んでもらうんだから
もっと嬉しそうな顔をしろ!」

来月の公演に向けて
資金難にも関わらず、こうして立ち稽古のために
わざわざ劇場を借りてやったというのに
満足の行く演出が出来ない。

いや、演出プランは近藤の頭の中では仕上がっている。
だが、演じる役者が思うように芝居をしてくれない。

中でも主演女優のメリー梓川が酷い。

セリフを飛ばすなんて日常茶飯事だ。
たった一言、セリフをアドリブで変えるだけで
芝居そのものがぶち壊れてしまう。

「メリー!何度も言わせるな!
お前を愛してくれている男なんだ
もっと嬉しそうな顔をしろ!!」

一向にラブシーンから先に進めない。
近藤の苛立ちはMAXだった。

「ブタカン(舞台監督)、そう仰いますけど
このシーンで胸を揉む必要ってあるんですか?
ハグするだけで愛し合っている事を表現出来ると思うんですけど」

メリーも負けずに近藤に食って掛かる。

「おまけにラストシーンは何ですか!
どうして私が舞台の上で裸を見せなきゃいけないんですか?
ここはストリップ劇場ですか?
そんなに裸を観客に見せたいんなら
ストリッパーでも呼んでくればいいじゃん!」

こいつは、なぁ~んもわかってねえな…
そろそろ看板女優の差し替えが必要な時期かもな…
近藤はそのように考えて
劇団員のプロフィール写真を眺めながら
代役の事を考えていた。

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