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女優なんて…
第15章 女優デビュー
「ほう…あなたが劇団の主宰ですか…
ならば、話しは早い
どうかね、この女を私に譲ってはくれないか」
頼むと言うよりは
何がなんでも奪うというニュアンスを込めて
大白川監督は上から目線で近藤にそう言った。
「優美子を引き抜くと言うんですか?
喜んでどうぞと私が言うとでも?
せっかく見つけたスター候補を
そう易々と譲るつもりはありませんよ」
優美子を渡さないとばかりに
近藤は私の前に立ち塞がった。
「主宰…
こう言ってはなんですけど、
優美子を東京に連れてきたのは私なのよ
いつまでもこんな劇団に閉じ込めておくなんて
私が許しません」
涼風あかねも
優美子とお芝居がしたくて
思わず言葉を荒げてしゃしゃり出た。
私は人身売買に翻弄される少女のように
事の成り行きを見つめるしかなかった。
あかねさんがキツイ口調で申し出てくれたことで
大白川監督は冷静を取り戻したかのように
「まあまあ、彼女をモノのように扱うのはやめましょう。
引き抜くといったって、何も優美子を劇団から奪うという訳ではありません
俳優の中には所属劇団はそのままで
舞台のない時は映画に出演する俳優だって多いのです
ほら、歌舞伎俳優だって本業の合間にドラマや映画に出演するでしょ?
あのように私が映画撮影するときは優美子を貸し出してもらうというパターンでもいいんです」
どうです?
これで手を打ちませんか?と
大白川監督は大人の対応をした。