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目覚めたのは 公園のベンチ
第18章 英麻
リビングから裕子の優しい声が聞こえ 降りていくと
裕子が微笑み和夫を見て
夕飯を食卓に並べ まるで新婚の新妻の様に
嬉しそうに話しかけてくる
「朝まで ぐっすり寝ちゃった 」
和夫の前に座り 照れた様に笑いかけて来る
「食事終わったら 少し出かけて来るね」
和夫の言葉に裕子が少し落胆したように顔を伏せ頷いた
「1時間位で 帰って来るから」
和夫の言うと 嬉しそうに顔を上げ 目を輝かせ頷いてきた
自宅を出ると 坂道を下り駅前から
見慣れた路地を進む 白い行燈が見え
何時もの様に ドアを開け頭の上の
ドアベルのカランコロンと言う音を聞き
店内に・・・
・・・ママが 笑顔で迎えて呉れ・・・
和夫は首を傾げた 店の雰囲気が違う
微妙な違和感を・・・・
ママの服装と 髪形が違っていた
何時も白い装いが 今日は黒いパンツと体にフィットした
黒いサマーセーターを纏い 体形を際立たせ
何時ものパーマを掛けた髪はストレートに変わり
胸の上までの長い髪の間から
大きな黒い瞳が和夫を見つめ
妖艶な笑顔で 和夫を迎えて呉れた
何時ものカウンターに座り
ママが薄い水割りを 目の前に出して呉れ
グラスを傾け
・・ママに・・・ 和夫は言葉を探していた
夢の話?・・・
夢の中で此処に来ている?・・・
今は夢の中?・・・
ふと顔を上げ ママの瞳と向き合い言葉を出そうとした時
ママの目は肉食の猫が 獲物を捕らえた目で
和夫を見つめ 語り始めてきた・・・・・
「夢から 覚めなくて此処に来たんでしょう?」
和夫が頷くと ママは遠くを見ながら
「このお店のドアは 現生と想像の出入り口なの このお店の名は エントリー」
「出入口なのよ・・・」
ママの瞳に 吸い込まれるように和夫の頭の中に電気が走り
目の前が揺らぎ始め・・・・・・
・・・朝の 光の中 公園のベンチで 起き上がった・・・・・