この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ラスト・レター
第1章 ラスト・レター
引っ越し業者の若者から手渡されたのは、半透明の、薄いビニールケースに入った封筒だ。居間にあった家具の後ろから出てきたという。白い封筒の表には私の名前が書いてある。その筆跡に見覚えがある。
まだ運び出されていないキッチンの椅子に腰を下ろし、ビニールケースを開けて封筒を取り出す。封はされていない。中にはきちんと折り畳んだ白い便箋が数枚。読もうとしてから老眼鏡が無いのに気がついた。
「どうかしたの。お父さん」
ポケットに入れたはずのメガネを探しながら、ドアから顔を出した長女に向かって、なんでもないよと返事をする。
メガネはちゃんとポケットにあった。さっき見つからなかったのはきっと動揺していたからだろう。
薄い便箋を広げる。自分でもわかるほどに手が震えている。仕方があるまい。その手紙は、五年前に病気で亡くなった妻から私へ宛てたものだったから。
まだ運び出されていないキッチンの椅子に腰を下ろし、ビニールケースを開けて封筒を取り出す。封はされていない。中にはきちんと折り畳んだ白い便箋が数枚。読もうとしてから老眼鏡が無いのに気がついた。
「どうかしたの。お父さん」
ポケットに入れたはずのメガネを探しながら、ドアから顔を出した長女に向かって、なんでもないよと返事をする。
メガネはちゃんとポケットにあった。さっき見つからなかったのはきっと動揺していたからだろう。
薄い便箋を広げる。自分でもわかるほどに手が震えている。仕方があるまい。その手紙は、五年前に病気で亡くなった妻から私へ宛てたものだったから。