この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ひだまりのねこ
第2章 拾う
部屋に入ってから確認してみた。
その黒い塊は猫だったのだ。
そう、黒猫の子猫だったのである。
優佳はその子猫の身体を優しくタオルで拭いてあげた。
雨の中、この子猫は一生懸命鳴き続けてきたのだ。
身体も少し冷えていた。
タオルに包んで手の中で温めた。
そうすると、少し落ち着いた様だった。
可愛らしい顔を見てみた。
左目は白く濁っていた。
雅人が話しかけてくる。
「まだ、乳飲み子じゃん?片目もおかしいよな?」
「そうね、片目は見えないかも知れないわ。他にも捨てられてる子がいるみたい。あちこちから声が聞こえるもの」
「ヒデー事する奴がいるんだな…」
「本当にそう感じるわ」
優佳はちょっと怒ったようにそう言った。
確かに、優佳が外に出た時、あちこちから鳴き声が聞こえていたのだ。
子猫はお腹を空かせている様であった。
雅人がこう言ってくる。
「今日の華山行きは中止だな」
「そうね、この子拾っちゃったし、気になるし」
「その子の面倒見てやれよ」
「うん、ありがとう。そうするわ」
「じゃ、俺は帰るから。また来るよ」
そう言うと雅人は玄関を出て自分の車で帰っていった。