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七色のリビドー
第1章 淫らな学識者

そんな私にもある日、好機が訪れた。
いつものように、私は「論文作成の手伝い」と称して七瀬みくを己の教授室に招いていた。
私はよくこうして彼女との時間をつくる。
無論、優等生な彼女は、ただ勉学の一環で手伝ってくれている訳なのだが、当の私は少しでも彼女と同じ時間を共有したくて、一人で終われる軽い作業の時でも、何かと口実をつけては、彼女を呼び出していたのだった。『彼女に触れたい』というリビドーを抑えに抑え込みながらの、この生殺しである空間は、帰宅してからの淫気をより激しくし、最高潮の快美に浸ることが出来るのだ。
だが、今日ばかりは少しだけ違っていた。
学会に提出する論文の締め切りが迫っていた私は、いつになく作業をしながら弱音を吐いてしまったのだ。
「ーーはあ…ヤバいな。この調子じゃ今日中に終わりそうにないし、いいアイデアが浮かばない」
「…あら、珍しいのですね。教授がそんなことを仰るなんて」
「はは、珍しいかい?」
「ええ…いつも素晴らしい論文を書かれているので」
「…そ、そんなことはないさ。教授という肩書きが無ければ、私など、ただ社会から取り残された無様な男さ」
「何故、ご自分のことをそのように仰るのですか?」
彼女の哀しみを秘めた瞳に、益々憐れになっていく。湧き出つ得体の知れない感情を抱きながら、私は言葉を続けた。
「確か。私の研究では、脳に快楽を与えれば、いい案が浮かぶのだが」
「…え?快楽?ですか?」
「ああ。そうだ、七瀬くん…。幸い君は女で私は男だ。少しだけ協力してくれないか?」
言って、自分でも何を言ってるのか理解不能で自嘲する。
しかし殊の外、彼女はキョトンとしていて、何故か嫌がる素振りは見受けられなかった。
いつものように、私は「論文作成の手伝い」と称して七瀬みくを己の教授室に招いていた。
私はよくこうして彼女との時間をつくる。
無論、優等生な彼女は、ただ勉学の一環で手伝ってくれている訳なのだが、当の私は少しでも彼女と同じ時間を共有したくて、一人で終われる軽い作業の時でも、何かと口実をつけては、彼女を呼び出していたのだった。『彼女に触れたい』というリビドーを抑えに抑え込みながらの、この生殺しである空間は、帰宅してからの淫気をより激しくし、最高潮の快美に浸ることが出来るのだ。
だが、今日ばかりは少しだけ違っていた。
学会に提出する論文の締め切りが迫っていた私は、いつになく作業をしながら弱音を吐いてしまったのだ。
「ーーはあ…ヤバいな。この調子じゃ今日中に終わりそうにないし、いいアイデアが浮かばない」
「…あら、珍しいのですね。教授がそんなことを仰るなんて」
「はは、珍しいかい?」
「ええ…いつも素晴らしい論文を書かれているので」
「…そ、そんなことはないさ。教授という肩書きが無ければ、私など、ただ社会から取り残された無様な男さ」
「何故、ご自分のことをそのように仰るのですか?」
彼女の哀しみを秘めた瞳に、益々憐れになっていく。湧き出つ得体の知れない感情を抱きながら、私は言葉を続けた。
「確か。私の研究では、脳に快楽を与えれば、いい案が浮かぶのだが」
「…え?快楽?ですか?」
「ああ。そうだ、七瀬くん…。幸い君は女で私は男だ。少しだけ協力してくれないか?」
言って、自分でも何を言ってるのか理解不能で自嘲する。
しかし殊の外、彼女はキョトンとしていて、何故か嫌がる素振りは見受けられなかった。

