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駆け込んだのはラブホテル
第10章 心変わり
東京のあのラブホテルは、さすが値段だけあって、かなりランクが高いところだったのだろうと二人は察した。
スマホ片手に駅周辺を歩いて見つけたラブホテルは、東京で泊まったところよりもずいぶんこぢんまりとしていた。
それでもちゃんと電子化だけはされていて、壁一面に並べられたパネルの空室ボタンを押せば人と話さなくても入室だけはできたし、ドアは相変わらず清算しないと開かないようになっていた。
適当に選んで入った部屋は、本当にベッドと小さな丸テーブルだけの簡素な部屋だった。
枕元のボックスティッシュとブラックボックスはしっかり揃っていた。
壁紙は薄いピンク色だった。
「どちらかというと、こっちのほうが僕のイメージに合ってますね」
桜木は、素直に風呂に入った。
ここまでの道中でずいぶん濡れてしまったし、東京より北に位置するこの町には、まだ肌寒さが残っていた。
それから、入れ替わりで守屋が風呂に入った。
守屋が髪を拭きながらベッドルームに戻ると、桜木はベッドの端に腰を下ろし、まだドライヤーで髪を乾かしていた。
昨夜と違って、ボタンはなく、紐で縛るタイプの寝巻きだった。
守屋は、寝巻きの下にスラックスのズボンを履いていた。
桜木は、それには何も言わなかった。
「早いですね」
「男ならこんなもんですよ」
桜木は、少なくとも大学生で一人暮らしを始めてから、社会人二年目までのこの六年間、男が風呂に入るのを待っていたことがないのだ、と、守屋は黙って考えた。