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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第5章 楽しい一夜の裏側で


 そろそろお開きという頃合いを見計らい、夏輝さんは言った。

「じゃあ、花火しましょー!」

 買い物に出かけた時、それを買おうと言ったのも彼女である。そうして俺たちは、慌ただしかった夜の終わりを花火でしめることになった。

 ちなみに、その頃には俺に纏わりついていた華火も回復したらしく、今は逆に俺との距離を取り、高坂さんと一緒に手持ち花火を楽しんでいる。

 だが、いくら酒が醒めたといっても、この後、原付で帰らせるわけにはいかない。そんな新たな悩みを覚えた時だった。

「お兄さん、コレ一緒にやりましょう」

「あ、ああ」

 夏輝さんから、七色に変色するタイプの花火を手渡され、並んでそれに火をつけた。

「うわあっ! すっごい綺麗!」

 夏輝さんは、無邪気に花火を楽しむ。

「……」

 でも俺は花火より、じっと彼女の顔を見つめていた。

 赤、緑、紫――火花の色彩を顔に映す夏輝木葉は、やはり俺にとって捉えどころのない存在に思える。

 さっきの脱衣場での件も、初日の夜の件も、彼女との接触は彼女が苦手にする暗闇の中での出来事だった。それに、どんな意味があるのか、それはまだわからない。

 だけど――

「ウフ、そんなに見つめて、どうしたんですか?」

「いや、なにも」

 慌てて視線を逸らしながら、俺は違和感を拭い切れなかった。

 今の無邪気な彼女と、闇の中の彼女を重ねることができない。だが、一つわかったこともあった。それは松川土埜と同じく、夏輝木葉も只ならぬ想いを秘めていること。

「やっと会えたんだもん」

 興奮の中で彼女の口にした言葉が、やはり引っかかっている。

 そして俺は後に、彼女との過去の因縁と向き合うことになるのだ。




【第五章おわり】



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