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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情
◆◆◆視点・岸本涼一◆◆◆
「俺はずっと憶えているから。つっちーと一緒に、この夕陽を見たこと」
湯船に浸かりながら、ぼんやりと天井を見つめていると、不意に松川土埜に対する自らのセリフを呟いていた。
「うわっ……はずっ」
あの時に自分がどんな顔をしてたのか想像すると、溜まらなく照れくさくなって顔を湯船に沈める。でも、次に同じ瞬間の彼女の表情を思い出し、水面からゆっくり顔を浮かべると、再び呟いた。
「よかったのか、あれで?」
正解なんて、わかるはずがない。少なくとも、すぐに答えがでることはないだろう。問題は、彼女の中にこそ存在するのだから。
それでもあの時、涙を流しながらも浮かべた彼女の笑顔は、年相応の女の子らしさを感じさせるものだった。だから、よかったと簡単に述べることはできないけども、少なくとも悪くない方向には進んでくれたはず。
そうだと信じたい。あとは、これから彼女の内面に、変化が訪れるかどうかだけど……。
「この夕陽すら、つっちーの悪夢を呼び覚ますのなら、その時は――」
俺はあの後、一体なんと言葉を続けようとしたのだろう。否、続けられなかったのは、答えが決まってなかったから。