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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第2章 コーヒーはブラックで
妙な夢を、見ていたような気がする。
「誰だよっ!」
叫んだ自分の声に驚き、勢いよく身体を起こしていた。
「うっ……イタタ」
しかし、すぐに襲ってきた鈍い痛みに、期せずして頭を抱えている。二日酔いの不快さを久しぶりに味わいながらも、ヘッドボードに手を伸ばしスタンドの弱い光を灯した。
欠伸をしながら立ち上がると、壁際に垂れた紐を手繰るように引く。壁の上部でブラインドシャッターが開き、この部屋唯一の窓が地下空間に朝陽をもたらした。この日差しの感じだと八時すぎだろうな、と思いつつ時計を見ると現在の時刻は午前七時五十二分。ほんの少しだけ、心にゆとりを覚えることができた。
昨夜の星空が約束してくれたような、いい天気だと感じる。しかし、この気分の方は、決して晴れやかとはいかない。そしてそれは別に、二日酔いのせいではないこともわかっていた。
頭の中でごちゃごちゃこじれそうな想いを、一旦無視する。ベッドに戻るとその上に腰掛け、ヘッドボードの上のケトルに飲みかけのペットボトルのミネラルウォーターを入れ、スイッチを入れた。もう一度、身体を横たえたい欲求になんとか抗いながら、何気に書斎の中を見渡す。
階段のある壁際に押しつけられたベッドからの視点。窓の下のやはり壁際には執筆作業をするデスクが置かれ、その上にはパソコンの他に閲覧中の資料が乱雑に広げられている。それ以外の部屋のスペースは、本で満たされた書架が無遠慮に居並んでいた。ほとんど図書館の一角といったイメージである。
朝陽が差し込む中で、微細な埃がゆっくりと舞った。
「ま、インスタントでいっか」
わざわざ独り言を呟き、ケトルの熱湯を用いマグカップにインスタントコーヒーを満たした。上に行けばバイト先でもらったコーヒー豆もあるが、今はまだ地下を出る気になれない。