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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第12章 エピローグ① その後
祖父と祖母は、俺が島で暮らしたいと話すと、快く迎えてくれるという。別荘に戻った俺は私物の整理を始め、それまでに与えられていた破格な財産(元は小遣いだが)を、岸本へと返却。それとは別に喫茶店のバイト代から貯金していた僅かな金で、島での生活をスタートさせることにした。
それでも祖父母に頼ってばかりでは、今までと同じ。俺はその年の新人賞に向けて書いていた小説を破棄し、島で仕事を求め働くことにした。が、なにも小説を諦めたわけではない。
あの別荘の生活自体が、岸本の恩恵によるものであると考えた時に、そこで生み出されたものを自分の作品とすることに、抵抗を覚えたのだ。そもそもそんな甘えた奴の書いたものが、評価されるはずもないだろう。
別荘を去ることに迷いはなかったけど、喫茶店でお世話になったマスターや華火(かほ)との別れには、只ならぬ想いが込み上げることになった。俺が僅かでも世間というものを知れたのは、マスターが雇ってくれたお陰だ。
「またいつでも顔を見せろ」
そう言ってポンと肩を叩いてくれたマスターには感謝しかない。
そして、華火は――
「涼一さん……ホントに辞めちゃうんすか?」
とても残念そうに言うと、送別会の席で、わんわんと泣いてくれた。俺のことを慕ってくれて、それ以上の想いを抱いてくれて、それをあんな風に傷つけた俺との別れを、最後の最後まで惜しんでくれた。
バイト仲間であり妹のようにも感じさせてくれた、俺の可愛い後輩である。
まあ、その様に新しい生活を始めてから、約五年の月日が流れたわけだが――。
もちろん、彼女たちとのその後についても、触れなければならないだろう。