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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第12章 エピローグ① その後
実家に戻ったのは五年前のこと。その時は既に病魔に蝕まれていて、最期の時を生まれ育った穏やかな島で過ごしたかったということのようだ。
岸本は、俺の母の死について知らなかった。二人は恋人として、つき合っていたわけではないらしく、夜の街で出会うと岸本から見込まれ、何度かそういう関係になったのだという。
暫く顔を見ないと思った矢先、岸本を訪ねてきた母は、その手に俺を抱いていたのだ。それが岸本の子であることを伝え、それが証明されると、母は責任を取るように迫った。
そうして互いの自由は尊重するという条件の元、一度は内々に籍を入れるも、結局はすぐに破綻。岸本が逢坂葉月に熱を上げた時には、もう母にも新しい男がいたという。そして幼い俺を残し、そのまま姿を消して、その後は会うこともなかったようだ。
岸本のその話を、俺は特に疑わなかった。仮に自分に都合のいいように話してるとしても、それを正してなにかが得られるわけでもない。俺に話さなかった理由も(それでも話してほしかったことに代わりはないが)、なんとなく察することができた。
出生については、もちろん思うところもあったが、とにかく自分の足で歩み出そうとしていた当時の俺にとって、大きなショックを受けて立ち止まっている暇はなかったのだ。