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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第13章 エピローグ② 願うべき幸せ
そんな思いに、追い打ちをかけるように。
「ここで、試してみますか?」
「は?」
「今、涼一さんの前で」
彼女はそう言うと、鞄から眼鏡のケースを出した。
俺は思わず喉を鳴らした。
しかし、ケースを手にした左手を見ると、ふっと息をつく。
「松川さんでも、冗談を言うんだね」
「ふふふ、あの夏のこと思い出したら、少し意地悪したくなっちゃって」
「今、幸せなんだね」
「……」
それには答えず、なにかを思慮するようにした後で、彼女は静かに語った。
「ちゃんと、涼一さんに会っておきたかったんです。今まで心の支えになって、私が勝手にそうしただけですが、それでもお礼を言いたくって――」
彼女は瞳を潤ませながら、言った。
「ありがとうございます」
きっと今は、他に支えがあるから……。
胸に込み上げるものがあった。それが只ならぬ想いであることに気づきながら、でもそれを、心の奥に仕舞って。
「どうか、幸せに――つっちー」
「……はい」
噛みしめるよいに答え、胸に当てた左手の薬指には、指輪が光っていた。