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落城
第2章 淫らな勝負
「志乃様、このようないかがわしい勝負、どうしてお受けになったのですか?」
二人の姿が見えなくなってから茜は尋ねた。
「こんなもの勝負などではありません。あの男は私を嬲り者にしたいだけです」
「それをわかっているのなら、なぜ――」
「拒んでも結局最後は力ずくで襲ってくるでしょう。そうなれば若君もそれにあなたも無事にはすまなくなります」
「若君はともかく私のことなど、どうでも――」
「そうはいきません。あなたは主人から預かった大事な弟子ですから」
「もったいない」
こんな状況で自分のことまで考えてくれていたとは。志乃の優しさが心に染みた。茜は涙が出そうになった。
「それに時間稼ぎをするにはちょうどいいし」
「時間稼ぎ?」
志乃は頷いた。
「夕刻までに私たちが到着しなければ、重久様が捜索の手を出してくれるでしょう。この場をなんとかしのぎ、それを待つのです。今はそれしか若君をお助けする手立てはありません」
なるほど。志乃様は、そこまで考えておられたのか。茜は感心した。しかし――。
「でも志乃様、この勝負……」
「そうですね。天女昇天流など、ふざけた名前を……。汚らわしい。私は女として生き恥をさらすことになります。辛いことになりそうです。でも私はおいそれと恥をさらす気はありません。あの男の思うようになどなりません。女の意地を見せてあげるつもりです」
志乃はニコリと微笑んだ。それは本当に天女のような微笑みだった。
二人の姿が見えなくなってから茜は尋ねた。
「こんなもの勝負などではありません。あの男は私を嬲り者にしたいだけです」
「それをわかっているのなら、なぜ――」
「拒んでも結局最後は力ずくで襲ってくるでしょう。そうなれば若君もそれにあなたも無事にはすまなくなります」
「若君はともかく私のことなど、どうでも――」
「そうはいきません。あなたは主人から預かった大事な弟子ですから」
「もったいない」
こんな状況で自分のことまで考えてくれていたとは。志乃の優しさが心に染みた。茜は涙が出そうになった。
「それに時間稼ぎをするにはちょうどいいし」
「時間稼ぎ?」
志乃は頷いた。
「夕刻までに私たちが到着しなければ、重久様が捜索の手を出してくれるでしょう。この場をなんとかしのぎ、それを待つのです。今はそれしか若君をお助けする手立てはありません」
なるほど。志乃様は、そこまで考えておられたのか。茜は感心した。しかし――。
「でも志乃様、この勝負……」
「そうですね。天女昇天流など、ふざけた名前を……。汚らわしい。私は女として生き恥をさらすことになります。辛いことになりそうです。でも私はおいそれと恥をさらす気はありません。あの男の思うようになどなりません。女の意地を見せてあげるつもりです」
志乃はニコリと微笑んだ。それは本当に天女のような微笑みだった。