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落城
第8章 破瓜
男の欲望を満たした章介と悪太郎は、少し休憩しよう、と裸のまま牢屋を出ていった。

後手に縛られたまま志乃と茜は残された。

「志乃様、大丈夫ですか?」

床にグッタリと身を横たえている志乃に茜が声をかけた。

志乃は重そうに身体を起こすと、弱々しい声で、「大丈夫です」と答えた。「あんな偉そうなことを言っておきながら、このような醜態を晒してしまいました。私はもうあなたにも、誰にも顔を向けることができません……」志乃は涙を流し続けた。

「何を仰るのです。志乃様はきちんとお役目を果たされたではありませか」茜は志乃を励ました。「見てください。外は暗くなっています。もう少し辛抱すれば重久様の助けが来てくれます」

確かにいつの間にか窓の外は薄暗くなっていた。

茜はまだ15。淫らな責めを受けて辛いだろうに、自分のことを差し置いて、私のことを励まそうとしてくれている――。それが志乃には嬉しかった。

「あなたの言うとおりですね。まだ若君が秀吉の手に渡った訳ではありません。希望はある……。ありがとう、茜」

志乃の顔に少し明るさが戻った。

「志乃様、背中をこちらに向けてください」

「何をするのですか?」

「縄を解きます」

「縄を?」

「はい」

「できるでしょうか?」

「やってみなければわかりません。時間がありません。あの男たちが戻らないうちにしないと……。さあ、早く」

二人は背中を合わせた。茜が身体を捻り、不自由な手で何とか志乃を縛っている縄の端を掴もうとする。しばらく格闘したあと、

「やった。片手ですが掴めました」茜は歓声を上げた。「次はどうこれを解くか……」

結び目を探り当て、手先を動かす。

縄はしっかりと結ばれており、片手で解くのは難しい。それでも根気よく続けていると、少しずつ結び目が柔らかくなっていった。

「少し緩くなりました」

茜が言うと、今度は志乃が、

「茜、がんばって」と励ました。

四半刻(約30分)くらい経っただろうか。

「志乃様、もう少しです。解けそうです」

茜が明るい声で言ったその時、無情にも牢屋の戸が開いた。
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