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父子の夜
第13章 追憶
鉄平は苦笑いしながらも、
「いい名前っすね」と優しい目を田辺に向けて言う。
『元子』という名は、
ずっと元気でいてほしい……
と、病弱だった両親が願いを込めて名付けたそうだが、
あの若さで亡くなったのだから、その願いは叶わなかったように思えた。
救いなのは、既に元子の両親は他界していて、それを知らなくて良かった事。
そして、雄平の名付け親でもある元子にとっての救いは、今を生きる雄平が、元子の願い通り優しい子に育ったという事だ。
(あんな酷い事をした俺を受け入れてくれたんだ……)
「祐真……雄平君みたいに心優しい子に育ってくれるといいなぁ……」
田辺は休憩所の天井を見上げ、その大きな口を横に引き伸ばしてニィ~っと笑う。
「ホント…雄平は…優しくて…俺は…救われてるっす……」
「うおっ!?おいおいおいっ……なんでだ……?」
突然、鉄平が顔を歪めて涙をこぼしだしたので、田辺はあたふたと狼狽えながらも自身の広い胸に鉄平の頭を抱え込んだ。
そして周囲に気づかせないように気を遣い、プロレス技を仕掛けているフリをした。
「オラオラ、どうした、鉄平……」