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父子の夜
第13章 追憶
 
『私はね、考えてたのがあるよ』

『どんなの?』

『鉄平から一字もらってー…』

どんな名前でも否定してやろうという意地悪な気持ちが沸く鉄平。しかし、

『優しい子に育ってほしいから、「優平」』

『ゆうへい……かぁ』

試しに一度『ゆうへい』と呼び掛ける。赤ちゃんに反応はないが、発した言葉にしっくりくるものがあった。

『いいよいいよ。ゆうへい。ただし、「優」はダメだ。女っぽいからな。男だから、男らしく「雄」だ。雄平。どうよ?』

『うん。鉄平に決めてほしかったし、それがいいよ。雄平ね』


『雄平く~ん』『ゆうへ~い』

両親の呼び掛けに雄平は目を閉じたまま愚図るような様子を見せる。
二人は顔を見合せて笑った。





「名前は考えておいた方がいいっすよ」

「名前?もう決めてるよ」

田辺は両手に冷えた麦茶の入った紙コップを持って戻ってきた。その内の1つを鉄平に差し出す。
それをペコリと頭を下げ受け取り、「どんなのですか?」と聞く。

「祐太朗の祐に真理子の真で、『祐真』」

「ほぅ……」

二人から取る…という発想は鉄平と同じだ。

(男ってのは総じて、面倒くさがりだよな…)




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