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父子の夜
第14章 今宵の月のように
「父ちゃんっ!おかえりなさいっ!」
「…おう」
「………」
ここ数日、鉄平は元気がない。
見上げる雄平は、こんな時どうしてあげればいいかわからない。
ただ、ずっとそばに寄り添うだけ。今日も鉄平の背後にピタリとくっついて移動する。
鉄平も雄平が心配してくれているのは知っている。
「…………」
「…………」
人が問題を抱えていそうな時、男は相手の領域に踏み込まないという。
雄平も、「何があったの?」「どうしたの?」とは聞かない。ただ傍で落ち込んだ鉄平を見守るだけだ。
『相談に乗るよ』……的な態度を取り、首を突っ込んでくる男は、単に他に目的があるだけの奴だ。
心配ヅラは上辺に過ぎず、実際あまり役には立たない。そういう上辺の優しさを欲する悲劇のヒロインにだけ通用するのだ。
鉄平はお決まりのパンツ一丁になり、一つ大きく息をつく。
ふと隣を見ると、雄平が、何をするでもなく、じっと突っ立っている。
そんな雄平に思わず抱きついた鉄平。すると雄平は、突然の事にビックリして体を硬直させた。