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父子の夜
第5章 そして、始まる
 
「こら、こぼすな雄平。全部飲め」

鉄平に顎を掴まれ上を向かされる雄平。
その上、顔中に飛び散った精液まで鉄平の指で口に運ばれた。

「ごぷッ…うぇっ…げぽッげぽッ……!!」

あまりに多量で、雄平はこぼしてしまったが、言われた通りに精液を飲み込んだ。

その直後、おもいっきり顔をしかめた雄平。鉄平の精液は非常に苦い。

「頑張ったな、雄平」

鉄平の大きな掌が雄平の頭を優しく撫でる。
雄平はその手に頭をおもいっきり擦りつけた。まるで子猫がじゃれるかのように…。


父ちゃんが戻ってきてくれた!

雄平はそう感じ、苦さも忘れて鉄平に笑いかけた。

鉄平は笑顔を返す事はなかったが、優しい目で雄平を見つめ、何度も何度も雄平の頭をいとおしそうに撫でていた。

雄平にとって夜の闇は、恐い存在というだけではなくなった。


父ちゃんが好き。


初めて芽生えた感情。
雄平の初恋だった。



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