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ex-girlfriend
第3章 僕の結婚
そこには、
誰も居なかった。


ベッドを使った形跡もないし、
なんていうか、
ヒトが居た空気感や匂いもない。


「えっ?」


僕の声が、なんだか他人の声みたいに響いたけど、
その声も壁にそのまま吸い込まれて消えてしまうような感じがした。


反射的に腕に付けっぱなしでいる時計を観ると、
時間は9時過ぎているから、
別に電話をしても問題はないと思って、
妻の実家に電話をしてみた。




4回ほどのコールの後、
妻の母親が硬い声で、
「もしもし?」と言うのが聴こえた。


「おはようございます。
あの…レイコさんは?」と言おうとする声を遮るように、

「やっと電話をしてきたのね?
いつ、気がつくのかと思ったけど?」と言う。


「実家に居るんですね?
それなら良かった。
迎えに行きま…」と言う声を、また、遮られる。


「どれだけあのコを蔑ろにして、
無視すれば気が済むのよ?
水曜日よ?
こちらに帰ってきたの。
妻の不在に4日も気がつかなかったわけ?
あんな真っ白な部屋に閉じ込めて可哀想に。
あれじゃあ、おかしくなるのも当たり前だわ。
離婚させます。
離婚届、郵送しますから。
それと、そこはうちのコの名義にして出て行って。
慰謝料は不要よ。
もう、顔を合わせたくないって言ってるから」



妻の母親は一方的にそう告げると電話を切った。



えっ?
水曜日?
まあ、確かに寝室も開けることもしないようになってたしな。



そして、妻とより、
彼女の母親との会話の方が多かった結婚生活だったことがなんだか可笑しくて、
嗤ってしまった。
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