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第5章 消えた彼女

インターホンを何度か鳴らしても、
全く応答がない。

諦めて帰ろうとしたところに、
いつかの、隣人の女性がたまたま、中から出て来た。



「あら？
いつかお会いしたわね？」

「はい。
あの時は伝言をありがとうございました」

「佐藤さんは残念だったわね？」

「えっ？」

「癌が転移して、
呆気なかったものね…」



頭の中で、疑問や色々なことが渦巻いてしまう。


そんな僕の表情を見て、

「あら？
ご存知なかったのかしら？
先々月よ？
佐藤さんの奥様、亡くなったの。
それで、美穂さんは、
ここに住むの辛いから引っ越すって言ってたのよね。
昨日、荷物を運び出してたから、
もう、居ないんじゃないかしら？」と言った。


「えっ？
あの…引っ越し先、判りますか？」と訊いてみたけど、
気の毒そうな顔で、

「何も仰ってなかったのよね」と言われてしまう。


引っ越しって？
どこに？


僕はすっかり混乱してしまって、
すごすごと家に戻った。