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雨宮さんちのバレンタインとホワイトデー
第11章 ホテルにて…*
板張りになったベランダに
小さな洗い場と露天風呂があって

陶器で出来た楕円形の浴槽には
源泉がかけ流しなのか
その浴槽の縁からは
湯気を上げたお湯が零れている

「日が暮れちゃったらさ
海しかないから外は真っ暗じゃん?
まだ、明るい時間なら海も見えるし、
それに今の時間なら…丁度、ここから
眺められるじゃないかなって。一緒に」

そうか 時間…丁度18時ぐらいだ

日の入りの時間…

「って、もしかして全部
透真の計算通りだったとか?
お夕飯の時間とか…その…色々と」

洗い場で身体を洗いながら
ののかが透真にそう尋ねて

「いや…それは…たまたまだけどさ」

先に洗い終えて
湯船に浸かっていた透真が
おいでと ののかの方へと手の伸ばして来て

その手に自分の手を重ねると
そのまま浴槽の中に引き入れられる

ののかが両手で湯船の中の
温泉をすくって それをまた戻すと

「透真…。凄い…贅沢だね。
ここから見える海も、あの夕日も
この温泉も、2人だけだもん」

「喜んでもらえてる?一緒に
温泉に浸かってさ海に沈んで行く
夕陽を眺めるなんて贅沢はさ。
中々出来ないでしょ?ねぇ、ののか。
今日は…、来て良かった…?」

ののかが自分の背中を
透真の胸に預けると
そのまま下から透真の顔を見上げて来て

「うん、勿論…だよ、透真…。
来て良かった…よ?」

「ののかに喜んで貰えたんだったらさ。
俺は、それで大満足だけどね?」

透真の言葉にののかが
きょとんと目を丸くさせて

「ちゃんとした、
旅行に来れたからって事?」

「勿論、それもあるけどさ。
旅先だけあって、今日のののかは、
いつもよりも、大胆だし素直でしょ?
俺としては…、普段からもっとさぁ、
今日ぐらい…俺に素直になってくれても
いいんじゃないかなぁって思うけどね?」

バシャンッとののかが
透真の顔にお湯を掛けて来て

「いっ、言わないでッ、忘れて。
さっき私が言った事とかは、
記憶から抹消してくれていいからっ!」

「それは、なんでなの?ののか。
ののかは、恥ずかしがり屋さんだな。
俺としては、もっと、聞きたいけどなぁ。
俺の事、ののかがどう思ってるか…
ねぇ、教えてよ…、ののか」

「…なっ!…ぅ゛っ、それは」
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