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雨宮さんちのバレンタインとホワイトデー
第8章 バレンタインナイト……*
先にバスルームを出ていた
透真の姿はそこに無くて

透真は下の階まで
何かを取りに行っていた様だった

お風呂に入る前までは
部屋の明かりは明るかったから
先に上がった透真が
暗めに調光してくれたみたいだった

「あ、ののか、ごめんごめん、
これ取りにさ、下に行ってたんだよ」

そう言ってこちらに見せて来たのは
透真がバレンタインの前に
自分でスーパーで買って来て居た
ハーシーのチョコレートシロップだった

「でも、透真はさ、
チョコ…嫌いなんじゃ…」

「食材が良ければ…さ、
俺もチョコがさ美味いって
感じるかも知れないじゃん?」

食材…って 
食べる物にカテゴライズされてるし

「食材…なの?私…」

「え?違うの?ののかは、
いつもさ俺に食べられてるでしょ?
ののか、あそこ、あそこに座ってよ」

あそこ…と透真が 
こっちに座る様に指定して来たのは
浴室の隣の壁の窪みに設置されている
洗面台の事だ

このハートだらけの部屋らしく
壁に設置されている鏡もハート型をしていて

洗面台自体も真っ赤なハート型になって居る

部屋の明かりは暗く落としてあるから

透真が洗面台の鏡の上について居る
独立したライトのスイッチを入れた

「座るって、この上?
ここ…洗面台だよ?透真」

ハートの形の洗面台をののかが
指さして透真に尋ねると
使うかと除菌のウエットティッシュを
渡されて 色々気にかかりつつも
それでそこを拭いて下のゴミ箱に捨てた

私が気にしたのは…この洗面台の
衛生面とかじゃなくて
座る場所じゃないって方なのだけど…

まぁ…今日は透真にサービスする日だから
下手にあれこれと不満を言うのは止めて

色々と内心思う事はありながらも

ののかは その洗面台に腰を掛けた

「ねぇ、これでいいの?透真」

「うん、ののか。
そのまま、足を組んでよ」

「足?こう?」

言われるままにののかが足を組むと
透真がそのののかの前に
傅くかのようにして腰を落とした

フェザータッチで膝から
つま先に掛けてののかの組んで
上になった方の足を撫で下ろして行く

「ののかはさ、
背も高いし…、足も長いよな。
俺とさ、同じ部署に富永って居るじゃん?
前に一緒に居る時に、
ののかも会った事あったでしょ?」

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