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第1章 エリーゼのために…

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　　葵さんが失踪みたいに突然いなくって絶望感に陥っていたくせに…
　突然、舞香ちゃんという存在感が僕の心の隙間に入ってきて、そして、一つの小さな光明を灯してくれてきたのだ。

　もう分かっているくせに…

　そう、舞香ちゃんのさっきの言葉がグルグルと脳裏の中を巡ってきていた。


『ねぇ、夏休みに何かあったの？』

『うん、なんかさぁ…
　うーん、なんとなくね…』
　
『いつも駿くんを見てるから…
　わ、わかるのよ、お、女のカンよ…』

『あ、もう、バカ、分かってるくせに、意地悪なんだから…』

　そんな舞香ちゃんの言葉は…

　半年前のバレンタインのチョコレートとラブレターを僕にくれた時から…

　そしてバレンタインのお返しも、ラブレターの返事さえもしなかった失礼な僕の事をあれからもずうっと見て、見つめてくれていた…

　そういう意味であると…

　こんな鈍感な僕でも意味が分かるし、彼女の気持ちも痛いほど伝わってきた。

　いや違うんだ…

　葵さんがいなくなったから、急に周りが、廻りの事が、言葉が…

　見えて、聞こえてきたのだろうと思われる。


　そうそれは…

　昨年末から色々と、急激に、僕の心とカラダは、葵さんという不思議で、魅力的で、魅惑的な存在により…

　刺激を受け…

　意識変革をさせられ…

　勉強を始め、大人への色々な事を゙教わり…

　僕自身の心とカラダが急激に大人へと変化、成長し、そしてこの夏休みに更に激しい刺激を多大に受けてしまい…

　それをこの半年間の間、僕の事をずうっと見続けてくれていた舞香ちゃんに、すっかり見抜かれてしまった…
　と、いうことであるのだ。

　だが…

　しかし…

　それが分かった今…

　舞香ちゃんの言葉の意味が分かった今…

　僕の心がすうっと軽くなったんだ。


　そう、なぜか、すうっと…

　軽くなった。


　僕は目で教室の端の席に座った舞香ちゃんの姿を追い…

「あ…」

　ドキン…

　そんな舞香ちゃんと目が合った瞬間に…

　心が震えてしまったのである。

　そして、心が軽くなった意味が…

　分かった気がしたんだ。

　それは…