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第1章 エリーゼのために…

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　僕は舞香ちゃんの言葉により、心がすうっと軽くなった意味が分かった気がした…

　それは…

『いつも駿くんを見てるから…
　わ、わかるのよ、お、女のカンよ…』

『あ、もう、バカ、分かってるくせに、意地悪なんだから…』

　多分…

　舞香ちゃんの存在感が、失踪的に突然いなくなってしまった葵さんの存在感に入れ変わったから。

　そして、ポッカリと空いた心の隙間にも…
　舞香ちゃんという存在感が入ってきたからだと思われた。

　僕の事を愛情を持って見続けてくれている人が、女性がいる…

　それはまるで…
　今までの葵さんと同じ存在感といえるんだ。

　それにその事に気付くのは、なんとなく必然的なんだと、僕は思った。

　なぜならば…

　あまりにも葵さんの失望感、喪失感、そして心の穴が大きすぎるから。

　寂し過ぎて…

　哀し過ぎだから…

　極端な話し、この穴は誰でも入れたのかもしれない。


　でも…

　それが舞香ちゃんで良かったかもしれない。


　舞香ちゃん…

　小林舞香…

　頭が良く、スポーツ万能…

　陸上部の短距離のエースで、確か100m走で地区優勝をしていた筈…

　そして目がクリッと大きな、ショートカットのボーイッシュな可愛い女の子である。

　そんな舞香ちゃん、彼女がなぜ僕に、いや、僕の事を好きになったのかは良く分からない…

　ただ、初めて意識、その存在感を自覚したのは…
　あのバレンタインデーにチョコレートとラブレターを貰った事からである。

　それまでの僕は本当に普通の男の子であり、葵さんのおかげで成績が急上昇をし、劇的に変わったから…

　そして葵さん以外の女の子なんて…

　いや、正確には葵さんはおちんちんのある女の子であったのだが…

　僕はそれまで全く異性という存在に興味が無かった…

　違う、興味はあったのだが、どうしてよいか全く分からない、普通の14歳の男の子であったから。