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  バガテル第25番イ短調  (エリーゼのために)
第1章 エリーゼのために…
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 いや違う…

 僕は、僕も、葵さんの魅力に魅かれ、惹かれ、そして女装という禁断の嗜好と、いわゆる同性愛に目覚めてしまった…

 おちんちんのある女の子なんだ。

 いいや違う…

 おちんちんのある女の子だった筈であり…

 そんな女装して、女の子の姿になり、ううん、女の子として生活する方がしっくりとしていた筈のアブノーマルな男の子であった筈だったのだが…

 葵さんの失踪的な留学と共に、女装が、女の子の姿になれなくなって約10日が過ぎ、そして学校が始まり、普通の男の子として登校すると、それまで女の子としての自分がしっくり、そしてワクワクとしていた筈だったのに…

 本当に男の子として意識して演技、振る舞いをしなくちゃいけなかったくらいに女の子化していた筈だったのに…

 自然に…

 そして普通に…

 従来通りの男の子に戻っている自分がいたんだ。

 それまでの、いや、葵さんと一緒に過ごした約10ヶ月という時間は…
 女の子として生活、振る舞っていた自分が自然で、気楽で、本当の自分は女の子なんじゃないのか…
 そして、学校に登校し、周りの同級生や、親と接する時は敢えて男の子として意識して生活しないと、言葉も、仕草も女の子化してしまう恐れがあった程であり…

 男の子としての自分の存在感に違和感さえ感じていた筈だったのに…

 葵さんが居なくなってからの約10日間の僅かな時間で…

 僕は普通の男の子に…

 自然に男の子としての自分に対しての違和感が無くなっていたんだ。

 いや、それを実感した…

 ううん違う…

 舞香ちゃんという存在感を意識した瞬間から…

 普通の男の子に完全に戻った…

 戻っている自分に気付いたんだ。


 あれほど男の子としての自分に違和感を感じていたのに…

 男の子としての存在が苦痛であったくらいなのに…

 僅かの時間で普通の男の子に戻ってしまっていたんだ。




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