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  バガテル第25番イ短調  (エリーゼのために)
第1章 エリーゼのために…
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 その頃の僕は葵さんに夢中になっていったし、心の中はますます女の子化していた時期であったから…
 舞香ちゃんの存在感はさほど強くは感じてはいなかったんだ。

「でもね、わたしも部活動にも燃えていたからさぁ…
 どんどん駿くんに夢中になっていたけれども、お付き合いの告白は夏休み、つまり、部活動を引退してからにしようって思っていて…」

「あ、うん…そ、そうなんだ…」

 僕は、どんどんドキドキが高鳴ってきていた…

 だってそんな話しをしてくる舞香ちゃんの目が…
 初めは恥ずかしそうな目だったけれど、どんどんキラキラと輝いてきていて…

 そのキラキラとした目に惹かれ、魅かれ、そして…

 吸い込まれそうになってきていたから。


「でね、7月末に部活動も引退したし、一緒に夏休みを過ごしたいなぁっても思っていたからさぁ…
 思い切ってね、駿くん家に告白しに行ったの…
 でも、駿くんはなんか軽井沢の親戚の家に行っちゃったって…」

「え、あ、ぁぁ、う、うん…」

 確かに…
 母親に、女の子が訪ねてきたから、親戚の家に行っちゃってるって云っておいたねって言われた記憶が蘇ってきた。

「だから、その夏休み大告白作戦もパーになっちゃって…

 でね、今日なの…」
 と…
 また急に、恥ずかしそうな顔をしながら言ってきたんだ。

「あ、う、うん、そ、そうなんだ…」

「うん、そうなんだけどね…」

「え?…」

「なんかね…
 今日、夏休み明けに久しぶりに駿くんに会って、顔を見たらさぁ…」

 ドキドキしていた…

 なんか、いや、なんとなくだけど、そう話してくる舞香ちゃんの目が…

 なんとなく、僕の全てを…

 知っている、いや、見抜いている…

 そんな目に感じていたから。




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