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  バガテル第25番イ短調  (エリーゼのために)
第1章 エリーゼのために…
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「なんかね、今日ね、夏休み明けに久しぶりに駿くんに会って、顔を見たらさぁ…
 なんとなくさぁ、雰囲気がガラっと変わった感じがしたのよ…」

「え、雰囲気って?」

「うん、だから『夏休みに何かあったの?』って訊いたのよ…」

 確かにそう訊かれた…

「でも、ガラっと変わったって?」
 そして僕は問う。

「うん、あのねぇ、なんていうかなぁ、夏休み前はキレイで可愛い、中性的な感じだったけどさぁ…
 今日夏休み明けに久しぶりに会って見た駿くんは、いや、駿くんの雰囲気がさぁ…
 少しだけキレ可愛いから、カッコいい、あ、うん、カッコ可愛い男の子の駿くんに変わった感じに見えてさぁ…」

「か、カッコ可愛いって…
 そんなぁ、ほ、褒め過ぎだよ…」

 だけど僕はそんな舞香ちゃんの言葉に、更にドキドキしてしまう…

 なぜなら…
 きっと、約10日以上、女の子になっていないから、隠れていた僕の中の男の部分が顔を出してきたからだと思われるから。

 あれほど男の子に違和感を感じていた僕の心が、この約10日間で、いや、この夏休み明けの学校に男の子として普通に登校をし、振る舞っていることにも殆ど違和感を感じなく、普通に男の子に戻れていたから…
 
 なんとなく、本当は、舞香ちゃんは、僕の秘密、内面、いや、全てを知っている、見抜かれている…

 そんな感じに思ってしまっていたから。

「……………」
 
 えっ…

 すると舞香ちゃんはじいっと僕の目を見つめてくる…

 ドキドキドキドキ…

「うん、やっぱり、なんか…
 前よりもっとカッコよくなってる」
 と、今度は、満面の笑顔でそう言ってきたんだ。

「か、カッコいいって?」

「ほら、キレイで可愛くてカッコよい美少年みたい…」

「あ、いや、それは褒め過ぎだよ…」

 そう、褒め言葉を全部並べたみたい…

「ううん、そのくらいにわたしは駿くんのことが大好きってことよ…

 あぁ、もう、恥ずかしいよぉ…」

 と、今度は恥ずかしそうに下を向く。

 そして僕の手をギュッと握り直してきて…

「だ、だからぁ…

 わ、わたしと…

 わたしと付き合ってください…」

 少し赤い顔をしながら…

 告白してくれたんだ。


 そして、その言葉は…

 まるで乾いた心にスーッと…

 僕の心に染み込んできたんだ…




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