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  バガテル第25番イ短調  (エリーゼのために)
第1章 エリーゼのために…
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「だ、だからぁ…
 わ、わたしと…
 わたしと付き合ってください…」
 舞香ちゃんは少し赤い顔をしながら、そう告白してくれてきた。

 そしてその言葉は、葵さんの失踪的な留学の衝撃により乾いてしまっていた僕の心にスーッと…

 ポッカリと喪失感という大きな穴が空いてしまった僕の心の中に、染み込み、入り込んできたんだ…

「え、あ……」

 僕はドキドキと高鳴り、いや、昂ぶりも感じていたのだが…
 どう返事をしていいのか分からないでいた。

 だって、あんなに葵さんと愛し合っていたのに…

 おちんちんのある女の子同士としての、まるで、いや、同性愛そのものの関係にすっかり満足し、悦に魅り、溺れていたのに…

 舞香ちゃんは普通の、ノーマルな女の子で…

 そんな僕が…と。

 だけど、実は、内心は…

 この舞香ちゃんの告白に心は高鳴り、昂ぶり…

 嬉しい…そんな感情が沸き起こってきていたんだ。

 その反面…

 葵さんがいなくなったからって、なんて調子のいいヤツなんだ…
 という、自虐と罪悪感の想いも沸き起ってもいた。

「ねぇ、駿くん…

 わたし…

 わたし、駿くんが大好きで堪らないの…」

 だけど…

 そんな舞香ちゃんのもう一押しの、その熱い言葉に僕の心は…

 自虐と罪悪感は、まるでガラガラと音を立てるかのようにあっさりと…
 崩れ落ちてしまったんだ。

 いや…

 葵さんの失踪的な留学による喪失感に…

 そして…

 寂しくて、哀しくて、悲しくて堪らない僕の心の中に、ポッカリと大きく空いてしまった穴に…

 舞香ちゃんの僕の事が大好きだという熱い想いが…

 スゥっと入り込み、そして、融けていくかの様に感じてきていた。


「あ…ぁぁ…う、うん…」

 僕は…

 肯定の返事をしてしまう。

「えっ、キャッ、本当っ?
 いいのねっ、キャぁ嬉しいぃ…」

 すると舞香ちゃんはそのクリッとした大きなキレイな目を輝かせながら、まるで悲鳴の様に小さく叫声を上げ…
 僕の手をギュッと握ってきたんだ。


「あぁ、嬉しいぃ」

 舞香ちゃんは空を見上げ、そう叫ぶ…

 


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