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  バガテル第25番イ短調  (エリーゼのために)
第1章 エリーゼのために…
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「駿くんは初めて?…なのよね?…」

「う、うん…」

 え、もしかして?…

 もしかして、舞香ちゃんは…

 初めてじゃないのか?…


「なのにもぉ、凄いんだからぁ」

「え、あ、ご、ごめん…む、夢中に…」
 と、言い掛けると…

「うん…そ、そうよね…
 わたしも、つい夢中になったけどさぁ…
 もう、びっくりよぉ…」

 あ…

 僕はそんな舞香ちゃんを見て…

「は、初めてじゃ…ないんだ?」

 そう、気付いたんだ。

 舞香ちゃんは初めてじゃないって…

「あ…う、うん、ごめんね…
 中二の時にね…
 先輩の彼氏がいてね…」

「…そうなんだ…」

「あ、で、でも、キスだけよ…
 キスしかしなかったのよ…」

「う、うん」

 実は僕はホッとしていた…

 舞香ちゃんが初めての…

 ファーストキスではなかったということに…

 だって、あんなにハードな、ディープなキスをつい興奮してしてしまい…

 とてもファーストキスにはそぐわないキスをしてしまったから…
 気にしていたから。

「あ、ご、ごめんね…」

 でもそんな僕の反応が…

 舞香ちゃんは初めてじゃないからと、僕が気にしてるのか…
 みたいに勘違いをして謝ってきた。

「い、いや…」
  違うのだが…

 すると舞香ちゃんは…

「ほら、一つ上のね、野球部のキャプテンだった先輩よ…
 告られて半年くらい付き合ったの…」

 言い訳?…

 僕が気にしていると一方的に勘違いをしてなのか、そう話してくる。

「しつこくてさぁ…
 断り切れなくってさぁ…」

 だけど、僕にはそんなことはどうでもよかったんだ…

「でね…き、キスだけね…あっ…」

 だから僕は、そんな舞香ちゃんの口を塞ぐ意味でも、再び抱き締め…

 キスをしていく…

「あ…ん…し、しゅ…ん…く…」

 だって僕の方が…

 僕の方が、もっと凄く、沢山…

 色々と…

 とても舞香ちゃんには想像できないくらいなことを…

 経験しているから…

 秘密が沢山あるから…

 キスくらい…

 キスくらいなんてことないんだから…





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