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担当とハプバーで
第5章 呼吸もできない沼の底
違う。
ハマったのは二ヶ月前だとしても、毎日何本も過去動画を見返して、内容覚えるくらいに見返して。
あの日だって、祥里の浮気疑惑さえなかったら、まだまだ甘えていたかった。
貯金なんて尽きたっていい。
そう思った。
でも、もし祥里に捨てられたら、一人で生きていく強さなんてないから。
脆くなった心を埋めるのに、あなたは大きすぎたから。
全部、私の、エゴ。
一つも言葉にならずに涙ばかりが溢れる。
さっきまで見下ろしていたハヤテが、今はベッドからこちらを見上げている。
額に乗せていた腕を、気だるそうにこちらに伸ばした。
大きな掌に誘われて、隣に横になる。
しゃくり上げる私に、ティッシュが差し出されて、目元と鼻を拭った。
情けない。
「悪い。俺ね、ここには月に二回来るかどうかなんだけど、大抵メンタル崩れてんの。ブログのそいつじゃないけど、発散に来てる。だから店での対応みたいに余裕ないけど、凛音が相変わらずファンってのは伝わった」
「……やばい新人インタビューだって見たし」
「っぶ、ははははっ! 最悪。あれ見た? キッツ」
快活な笑いに一瞬で空気がほぐれる。
こちらを向いて横向きになったハヤテが、楽しそうに私の頬を撫でる。
「ハワイ宣言見たんだ」
「見た。三十になったら辞めちゃうんでしょ」
「そう。順調に来てる。月売り上げ一千万キープできて、動画収入も上乗せされれば繰り上げで達成するかも」
「具体的な金額聞くとやばい……」
「じゃあ俺の年齢も知ってるわけだ」
「うん。びっくりした」
「流石に年上だとは思わなかっただろ」
「う、どうだろ……何歳でも納得はしたかも」
涙が止まってきた。
そうだ、店ではこんな感じだった。
こんな風に会話が楽しかった。
また目の奥が熱くなってくる。
「まあでもタイミング的には良かったかもな」
真意がわからず眉をひそめると、ハヤテが身を起こして私の顔の両脇に手をついた。
片膝が脚の間に割り入って、とっさに閉じようとしたのが防がれてしまう。
照明を遮るように視界を埋めたハヤテの表情は、カウンターを指で叩いた時のように挑戦的で、いともたやすく私から平穏な気持ちを奪い去る。
「姫は抱けないけど、凛音はただのファンに戻ったから。せっかくなら楽しまないと」
ぐぐ、と脚が股間を押し上げる。
「ねえ。勿体無くない?」